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神戸地方裁判所 昭和53年(ワ)1026号 判決

原告

山口道子

被告

有限会社福田工業所

ほか二名

主文

被告らは各自原告に対し、金一〇八万四、三六七円およびうち金九八万四、三六七円に対する昭和五三年一〇月三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は、これを五分し、その四を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

この判決は、原告勝訴の部分にかぎり、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告らは各自原告に対し、金四六六万六、四三九円およびうち金四一六万六、四三九円に対する昭和五三年一〇月三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行の宣言

二  被告ら

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  本件交通事故の発生

原告は次の交通事故による傷害を受けた。

(1) 日時 昭和五一年一二月七日午前一〇時三〇分ころ

(2) 場所 神戸市兵庫区西出町一丁目二番一五号先路上

(3) 加害車(1) 普通乗用自動車(神戸五五ち七二八一)

運転者 被告野口和夫(以下被告野口という)

保有者 被告有限会社福田工業所(以下被告会社という)

(4) 加害車(2) 普通乗用自動車(神戸五六に五〇七六)

運転者 被告木下泰伸(以下被告木下という)

同乗車 原告

(5) 事故態様 道路左側に縦列状態に駐車していた数台の自動車のうち、中央付近に駐車していた被告野口運転の加害車(1)が走行するため、列を抜けて走行車線に出ようとして右にハンドルを切り発進した際、折柄、その走行車線を同一方向に進行していた被告木下運転の加害車(2)の左前部ドア付近と被告野口運転の加害車(1)の右前照灯外側付近とが接触した。

(6) 傷害の部位、程度

(イ) 傷病名 頭部外傷Ⅱ型、頸椎部挫傷

(ロ) 治療期間 昭和五一年一二月八日から昭和五二年二月一八日までと同年三月一一日から同月三一日まで小原病院、同年二月一八日から同年三月一一日まで飯尾病院に入院治療を受け(入院日数一一四日間)、同年四月一日から昭和五三年七月二四日まで小原病院に通院治療を受けた(実通院日数一〇七日間)。

(ハ) 後遺症 昭和五三年七月二四日症状固定。

他覚的所見を伴う神経症状、自覚的症状として頂部疼痛。左上肘のシビレ感(一四級該当)。

2  責任原因

(1) 被告会社は加害車(1)を、被告木下は加害車(2)を保有し当時、運行の用に供していたものであるから、被告会社および被告木下は自賠法三条所定の責任がある。

(2) 被告野口は、駐車中の加害車(1)を運転して、走行車線に出ようとして右にハンドルを切り発進した際、前方を注視しなかつた過失によつて、本件交通事故を惹起せしめたものであるから、民法七〇九条所定の責任がある。

3  損害

(1) 治療費 金二四五万四、四〇〇円

(イ) 小原病院分 金二二〇万四、二七〇円

(ロ) 飯尾病院分 金二五万〇、一三〇円

(2) 付添看護料 金二八万五、〇〇〇円

昭和五一年一二月八日から昭和五二年三月三一日までの入院期間中、付添看護を要したので、その入院期間一一四日間の付添看護料を一日金二、五〇〇円として算出した。

(3) 入院雑費 金六万八、四〇〇円

右入院期間中の入院雑費を一日金六〇〇円として算出した。

(4) 通院交通費 金七万〇、六二〇円

昭和五二年四月一日から昭和五三年七月二四日までの通院期間中、通院交通のため往復ともタクシーを利用しなければならなかつたので、実通院日数一〇七日間の一回片道のタクシー代金は金三三〇円であるから、これにより通院交通費を算出すると金七万〇、六二〇円となる。

(5) 休業損害 金二三九万二、一〇〇円

原告は、昭和二三年一〇月四日生れ(当時二八歳)で手芸、人形製作等の技術をもち、大丸百貨店、ダイエー等で講習会の講師として収入を得ていたところ、本件交通事故により受傷し、昭和五一年一二月八日から症状の固定した昭和五三年七月二四日まで入通院治療のため休業を余儀なくしたものであるが、右収入は昭和五二年賃金センサス第一巻第一表の産業計、企業規模計、学歴計による女子労働者の年間賞与額を含む平均月額金一二万五、九〇〇円を下ることがないから、右により休業期間一九か月の休業損害を算定すると金二三九万二、一〇〇円となる。

(6) 逸失利益 金一四万〇、五七九円

原告の後遺症は一四級に該当し、その労働能力喪失率は五パーセント、その喪失期間は二年間と考えるのが相当であるから、これにより逸失利益を算定すると金一四万〇、五七九円となる(125,900円×12×0.05×1.861=140,579円)。

(7) 慰籍料 金二〇〇万円

(8) 弁護士費用 金五〇万円

(9) 損益相殺 金三二四万四、六六〇円

原告は、自賠責保険から治療費分として金一九七万九、六六〇円、後遺障害補償分として金五六万円の給付を受けたほか、被告会社から金二〇万円、被告野口から金二〇万円、被告木下から金三〇万五、〇〇〇円を受領した。右の合計額は金三二四万四、六六〇円である。

4  結論

よつて、原告は被告らに対し、前記3の(1)ないし(8)の合計額金七九一万一、〇九九円から(9)の金三二四万四、六六〇円を控除した金四六六万六、四三九円とこれより(8)を控除した金四一六万六、四三九円に対する昭和五三年一〇月三日(訴状送達の日の翌日)から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を連帯して支払うべきことを求める。

二  請求原因に対する被告会社、同野口の認否

1  請求原因1(1)ないし(4)、(5)のうち加害車(1)に加害車(2)が接触事故を起したことは認めるが、(5)のうちその余の事実は争う。(6)は知らない。

2  同2(1)のうち被告会社が加害車(1)を保有し、当時、運行の用に供していたことは認めるが、被告会社が自賠法三条所定の責任を負う旨の主張は争う、(2)は否認する。

3  同3(1)ないし(8)は争うが、(9)は認める。

三  請求原因に対する被告木下の認否

1  請求原因1(1)ないし(6)の認否は被告会社、同野口の認否と同じ。

2  同2(1)のうち被告木下が加害車(2)を保有し、当時、運行の用に供していたことは認めるが、同被告が自賠法三条所定の責任を負う旨の主張は争う。

3  同3(1)ないし(9)の認否は被告会社、同野口の認否と同じ。

四  被告会社の自賠法三条但し書の免責の抗弁

1  本件交通事故は、被告会社、同野口が加害車(1)の運行に関し注意を怠らなかつたが、加害車(2)の運転者である被告木下の過失によつて惹起したものである。

本件事故現場は、東西に通ずる幅員五・七メートルの道路であるが、当時、道路の両側には自動車が数台駐車していたため、自動車が一台ようやく通過できる程度の余地しかなかつたところ、被告野口が道路左側に駐車していた加害車(1)を発進させようとして、後方を確認したうえ、ハンドルを右に切つて時速約五キロメートルで右方向に出ようとした際、被告木下が前方の注意を欠いて警音器を吹鳴することもなく、漫然時速約三〇キロメートルで右道路を東から西に走行したため、加害車(1)に加害車(2)が接触したものであるから、本件交通事故は、加害車(2)の運転者である被告木下の一方的過失によつて惹起したものであつて、被告会社、同野口には加害車(1)の運行に関し注意を怠つた過失はない。

2  本件交通事故の発生については、加害車(1)の構造上の欠陥または機能上の障害の有無とは関係がない。

五  被告木下の自賠法三条但し書の免責の抗弁

1  本件交通事故は、被告木下が加害車(2)の運行に関し注意を怠らなかつたが、加害車(1)の運転者である被告野口の過失によつて惹起したものである。

被告木下が加害車(2)を運転して東西に通ずる道路を東から西に走行していたところ、被告野口は加害車(1)を運転して左方の小さい道から左折しようとして被告木下が走行していた道路上に飛び出してきて加害車(2)にぶつかつてきたものであるから、本件交通事故は、被告野口の一方的過失によつて惹起したものであつて、被告木下には加害車(2)の運行に関し注意を怠つた過失はない。

2  本件交通事故の発生については、加害車(2)の構造上の欠陥または機能上の障害の有無とは関係がない。

六  被告会社、同木下の自賠法三条但し書の免責の抗弁に対する認否

争う。

第三証拠〔略〕

理由

一  本件交通事故の発生について

請求原因1(1)ないし(4)は当事者間に争いがなく、右事実に成立に争いのない乙第四号証ないし第八号証、第一一、一二号証、被告野口、同木下本人尋問の結果によれば、本件事故現場は、アスフアルトで舗装された平坦な歩車道の区別のない両側に路側帯(北側の幅員が〇・七メートル、南側のそれが一・〇メートル)を有する幅員五・七メートルの東西に通ずる道路(市道)であつて、交通は閑散であること、被告野口は、東西に通ずる右道路の南側に東西に路側帯にまたがつて縦列状態で駐車していた数台の自動車の中央付近に加害車(1)を駐車させていたが、右道路を東から西に発進しようとして、後方の安全を確認することなく、加害車(1)を運転してハンドルを右に切り、約一・八メートル右前方に進行したところ、折柄、自車後方から右道路を東から西に進行してきた被告木下運転の加害車(2)を右側方に認め、ブレーキをかけたがそのときには既に自車右前部を加害車(2)の左前部ドア付近に接触させたこと、被告木下は、加害車(2)を、その助手席に原告を同乗させて運転し、東西に通ずる右道路を時速約三〇キロメートル(速度制限四〇キロメートル)で東から西に走行していたところ、約一五メートル左前方に、右道路の南側に東西に路側帯にまたがつて縦列状態で駐車していた数台の自動車のうち、中央付近に駐車していた加害車(1)のみが、運転者が乗車していて、その前部を右にふつているのを認め、同車が発進しようとしているのでないかと感じたが、同車が方向指示器を出していなかつたところから、漫然同車が停車していてくれるものと軽信し、そのまま同一速度で同車の右側を通過しようとした際、折柄、被告野口が加害車(1)を運転してハンドルを右に切り、自車の進路上に進行してきたため、自車左前部ドア付近を加害車(1)の右前部に接触させたこと、以上のとおり認めることができ、被告木下、同野口各本人尋問の結果中、右認定に反するような部分は採用できず、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。そして成立に争いのない甲第五号証乙第七号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認める甲第二号証の一ないし五、第三号証の一、二、第四号証、証人山口よち江の証言、原告本人尋問の結果によれば、原告は、本件交通事故により、事故当日、飯尾病院で「頸椎挫傷」の病名のもとに加療七日間を要する旨の診断を受けたが、翌昭和五一年一二月八日、小原病院で「頭部外傷Ⅱ型、頸椎部挫傷」の病名のもとに入院加療を要すとの診断を受け、同日より昭和五二年二月一八日までと同年三月一一日から同月三一日まで同病院において入院治療を受け、同年二月一八日、飯尾病院で「頸椎挫傷」の病名のもとに入院加療を要すとの診断を受け、同日より同年三月一一日まで同病院において入院治療を受け(入院日数通算一一四日間)、同年四月一日、小原病院で「頭部外傷Ⅱ型、頸椎部挫傷」の病名のもとに通院加療を要すとの診断を受け、同日より昭和五三年七月二四日まで同病院において通院治療を受け(実通院日数一〇七日間)、昭和五三年七月二四日、同病院で症状固定の診断を受け、その後遺障害の内容は、「(1)他意的所見を伴う軽度の神経症状を後遺する。(2)自覚症状として〈1〉頂部硬直感及び疼痛、〈2〉顔面、頭部の頭重感、〈3〉左上肘のシビレ感。以上頸腕症候群の症状であり、他意的には筋力テストによる筋力の低下、握力の低下、EEGの軽度異常である。」とするものであることが認められ、他に右認定を左右する証拠はない。

二  責任原因について

被告会社が加害車(1)を、被告木下が加害車(2)を保有し、当時、運行の用に供していたことは当事者間に争いがないところ、既に認定した本件交通事故の態様によれば、本件交通事故は、被告野口が駐車していた加害車(1)を運転して、東西に通ずる道路を東から西に発進しようとした際、後方の安全を確認することなく、ハンドルを右に切つて進行した過失と、被告木下が加害車(2)を運転して、東西に通ずる道路を東から西に走行していた際、道路南側に駐車していた加害車(1)が前部を右にふつて発進しようとしているのを認めながら、漫然同車が停車していてくれるものと軽信し減速することなく、時速約三〇キロメートルで同車の右側を通過しようとした過失とによつて惹起したものであつて、被告会社および同木下の自賠法三条但し書の免責の抗弁は、いずれも採用できないものであるから、同被告らが自賠法三条所定の責任を負うのはいうまでもなく、また、被告野口が民法七〇九条所定の責任を負うことは明らかである。

三  損害について

(1)  治療費 金三四五万四、四〇〇円

(イ)  小原病院分 金三二〇万四、二七〇円

治療費として自賠責保険から金一九七万九、六六〇円が給付されたことは当事者間に争いがなく、原告本人尋問の結果と弁論の全趣旨によれば、右金一九七万九、六六〇円は小原病院における治療費として給付されたものであることが認められ、原告本人尋問の結果とこれにより真正に成立したものと認める甲第三証号の一、二によれば、右以外に小原病院における治療費として金一二二万四、六一〇円を要したことが認められるから、小原病院における治療費は合計金三二〇万四、二七〇円である(原告は金二二〇万四、二七〇円と主張するけれども違算によるものと認める。)。

(ロ)  飯尾病院分 金二五万〇、一三〇円

成立に争いのない甲第六号証によれば、飯尾病院における治療費として金二五万〇、一三〇円を要したことが認められる。

(2)  付添看護料 金二八万五、〇〇〇円

原告本人尋問の結果により真正に成立したと認める甲第二号証の一ないし五によれば、昭和五一年一二月八日から昭和五二年三月三一日までの入院期間中、原告には付添看護を要したことが認められるので、その入院期間一一四日間について、その一日当りの付添看護料は金二、五〇〇円をもつて相当とするから、これによれば金二八万五、〇〇〇円となる。

(3)  入院雑費 金六万八、四〇〇円

右入院期間中の入院雑費は、一日当り金六〇〇円を下ることはないから、これにより入院雑費を算出すると金六万八、四〇〇円となる。

(4)  通院交通費 金一万九、二六〇円

原告が昭和五二年四月一日から昭和五三年七月二四日まで小原病院に通院し、その実通院日数が一〇七日間であることは既に認定したとおりであるが、原告本人尋問の結果によればバスで通院するとすれば一回につき金九〇円を要することが認められるから、これにより通院交通費を算出すると金一万九、二六〇円となる(90円×2×107=19260円)。もつとも原告は、通院にはタクシーを利用しなければならなかつたと主張して、これにより通院交通費を算出するのであるが、原告の傷害の部位、程度、後遺症の内容に照らせばタクシーを利用しなければならなかつたものとは認められないから、その要した通院交通費のうち、バスを利用したとした場合の右金一万九、二六〇円の限度で本件交通事故と相当因果関係の範囲内にある損害額と認める。

(5)  休業損害 金六六万三、〇〇〇円

原告本人尋問の結果によれば、原告は、本件交通事故当時、木目込人形などを製作して月額金九万円を下らない収入を得て生計を維持していたことが認められるところ、原告は、本件交通事故により受傷した結果、昭和五一年一二月八日から昭和五二年三月三一日までの一一四日間の入院期間と昭和五二年四月一日から症状の固定した昭和五三年七月二四日までの実通院日数一〇七日間について、休業を余儀なくしたものと認められるから、その休業損害は金六六万三、〇〇〇円となる(90,000円÷30×221日=663,000円)。原告は、昭和五二年四月一日から昭和五三年七月二四日までの全期間について休業を余儀なくしたとして、その休業損害を求めるのであるが、原告の傷害の部位、程度、後遺症の内容に照らせば、通院期間の全期間にわたつて休業を余儀なくしたものと認めるのは相当でない。

(6)  逸失利益 金五万一、四〇八円

既に認定した原告の後遺障害の内容によれば、原告の労働能力喪失率は五パーセント、その喪失期間は一年と認めるのが相当であるから、これにより逸失利益を算定すると金五万一、四〇八円となる(90,000円×12×0.05×0.952=51.408円)。

(7)  慰藉料 金一五〇万円

原告の年齢、職業、本件交通事故による傷害の部位、程度、後遺症の内容、入通院期間、その他諸般の事情に照らせば、原告が本件交通事故によつて被つた精神的苦痛に対する慰藉料額は金一五〇万円をもつて相当と認める。

(8)  素因の寄与度による減額

原告は、既に認定したとおり、昭和五一年一二月八日より昭和五二年二月一八日まで小原病院において入院加療を受けながら、同年二月一八日より同年三月一一日まで飯尾病院において入院加療を受け、さらにふたたび同年三月一一日より同月三一日まで小原病院において入院加療を受けたのであるが、原告が小原病院から飯尾病院に転院したのは、証人山口よち江の証言と原告本人尋問の結果によれば、原告が小原病院に入院中、同病院の看護婦の些細な言動に興奮したのであつて、特に治療上転院を必要としたためでないことが認められるのみならず、本件事故の態様と原告の受傷の部位、程度、後遺症の内容に照らして検討するときは、原告の性格、気質その他の心因的要素が原告の事故後における症状の発現および長期化に寄与しているものというべく、損害の公平な分担という理念から、現症への右素因の寄与度を過失相殺に準じ、割合的に控除するのを相当とするから、諸般の事情に照らし、前記(1)ないし(7)の合計金六〇四万一、四六八円の損害額について、その相当因果関係を有する損害に対する寄与度を三〇パーセントと認め、これを控除すると金四二二万九、〇二七円となる。

(9)  損益相殺 金三二四万四、六六〇円

原告が自賠責保険から治療費として金一九七万九、六六〇円、後遺障害補償分として金五六万円の給付を受けたほか、被告会社から金二〇万円、被告野口から金二〇万円、被告木下から金三〇万五、〇〇〇円を受領したことは当事者間に争いがない。

(10)  弁護士費用 金一〇万円

そうすると原告が請求し得べき損害額は金四二二万九、〇二七円から金三二四万四、六六〇円を控除した金九八万四、三六七円であるところ、本件訴訟の難易度、訴訟の経過、内容、認容額その他諸般の事情に照らせば、本件交通事故と相当因果関係の範囲内にある損害額としての弁護士費用は金一〇万円をもつて相当と認める。

四  むすび

よつて、原告の本訴請求は、原告が被告らに対し、金一〇八万四、三六七円とうち金九八万四、三六七円(弁護士費用金一〇万円を控除した金額)に対する昭和五三年一〇月三日(訴状送達の日の翌日)から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を連帯して支払うべきことを求める限度において正当であるから、これを認容すべきであるが、これを超える部分は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条、九二条、九三条一項本文を、仮執行の宣言について同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 阪井昱朗)

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